雇用保険業務取扱要領(行政手引)

20001-23500 適用関係

21502(2) 離職証明書記載事項の審査

 離職証明書の記載事項の審査は、原則として、その者に係る資格喪失届記載事項の審査と並行して行うものとする。

 記載事項の内容が事実であるか否かの審査は、次の要領によって行う。ただし、提出された離職証明書の下記ハの賃金台帳等との照合等については、21206のイのなお書に準ずる。

 なお、これらの事業所については、主管課において実施する事業所監査に際し、特に配慮する。

  • イ 離職証明書の⑦欄(離職理由)については、次の点に留意して記載する。
    • (イ) 企業整備による大量解雇のあった場合等離職証明書の記載事実が明白であるとき以外は、努めて離職者の出頭を求めて事情を聴き、事業所の労働者名簿の解雇、退職又は死亡の理由欄等を調査し、あるいは労働基準監督署に解雇予告除外認定申請書について照会する等できるだけ事情を明らかにする。
    • (ロ) 離職理由の「1」「2」「3」「4の(1)」及び「5」に該当する場合、事業所の労働者名簿の解雇、退職又は死亡の退職理由欄を調査する等、できる限り事情を明らかにする。離職理由の「4の(2)」に該当する場合、事業主が離職者から把握している範囲で確認し、できる限り事情を明らかにするように努める。
       なお、倒産手続が開始された後の離職、事業所の廃止による離職、契約期間満了による離職については、特定受給資格者に該当する可能性もあるものであるため、この段階において、事業主より倒産開始手続きの事実等を慎重に確認しなければならない。
       ただし、定年退職など特定受給資格者に該当する可能性がないことが明らかであり、かつ、当該事業所より提出された離職証明書の離職理由について過去の取扱実績にかんがみ、誤記載がないような場合においては、窓口等において事業主に離職理由を確認の上、取り扱うこととしても差し支えない。
  • ロ 離職証明書の⑧欄(被保険者期間算定対象期間)及び⑨欄(⑧の期間における賃金支払基礎日数)については、離職の日以前1年間のすべてについて記載されていない場合であっても、既に記載されている内容により、その者が受給資格又は特例受給資格を有することを把握することができるときは、補正させることを要しない。
  • ハ 離職証明書の⑧から⑫までの各欄(離職の日以前の賃金支払状況等)は、原則として賃金台帳、出勤簿等の賃金支払に関連する帳簿を提出させ、これと照合するものであるが、賃金支払基礎日数については、必要に応じ、工事関係書類等を提出させ、適正に記載されているかどうかを確認する。
  • ニ 離職証明書の⑬欄(備考)に、法第13条第1項に該当するため、当該疾病名又は負傷名等及び賃金の支払を受けることができなかった期間が記載されている場合は、事業主に医師の診断書等その理由を確認するための証明書等を提出させてその事実を確かめる。この場合、疾病又は負傷以外の理由について離職証明書を発行した事業主の証明により確認するときには、離職証明書と別に証明書を提出させる必要はない。
     また、⑬欄に「休業」の表示がある場合には、次に掲げる書類等を必ず提出させ、記載内容を確認する。
    • (イ) 所定労働日所定休日等を明らかにする就業規則等
    • (ロ) 当該離職者の出勤状況及び休業状況を明らかにする出勤簿等の書類
    • (ハ) 労働日について支払われた基本賃金、扶養手当その他の賃金と明確に区分されて休業手当の支払額が明記された賃金台帳
       なお、提出された離職証明書の⑬欄に「雇調金」の表示がある場合には、上記の書類等により確認することはもちろん、要すれば、雇用調整助成金支給台帳等安定所の保管している雇用調整助成金の支給に係る書類と照合する。
  • ホ 離職証明書の⑭欄(賃金に関する特記事項)に記載のあるものについて、次の事務処理を行う。
    • (イ) ハに準じて賃金台帳、出勤簿等の賃金支払に関連する帳簿を提出させ、これと照合することにより⑭欄に記載されている賃金が賃金日額の算定基礎に含められるべきものであるか否かを確認する。
    • (ロ) 必要があると認められるときは、労働協約、就業規則等の諸規程を提出させ、又は他の社会保険における取扱いを聴取する等により調査する。
    • (ハ) 上記(イ)、(ロ)により、⑭欄に記載されている賃金が特別の賃金に該当し賃金日額の算定基礎に含められるべきものであることを確認した場合には、離職証明書、離職証明書事業主控及び離職票-2の公共職業安定所記載欄にその判断の根拠とした事項を記載する。  (例) 労働協約(就業規則)により確認 相当期間慣行となっている。
    • (ニ) 他方、特別の賃金以外の賃金を誤って⑭欄に記入している場合は、離職証明書及び離職票-2の当該記載を抹消し、安定所長印(小)を押印する。
       また、毎月の賃金に含めるべきものを⑭欄に記入している場合には、通常の離職証明書の補正と同様に処理する(21503のロ参照)。
  • ヘ 船員である被保険者であった者に係る離職証明書である場合には、次の事務処理を行う。
    • (イ) ホの(イ)、(ロ)に準じて、当該船員に対する賃金支払が、固定給の増減や乗船時に支給される各種手当等によって乗船時と下船時で変動する賃金制度(船員に係る賃金日額の算定の特例(平成21年12月28日厚生労働省告示第537号)に該当する賃金制度。漁船に多くみられる水揚代金を分配する歩合給制度とは異なることに留意すること。)に基づき行われていたものであるか否かの確認・調査を行う。
    • (ロ) 当該船員に対する賃金支払が、船員に係る賃金日額の算定の特例に該当する賃金制度に基づき行われていたことを確認した場合は、離職証明書、離職証明書事業主控及び離職票-2の公共職業安定所記載欄に「船員特例賃金」と表示する。
  • ト 離職証明書の⑮欄(本人確認)については、⑦欄(離職理由)以外に係る離職証明書の内容の確認に係るものである。
  • チ 事業主と労働者との間において、主張する離職理由が相違する場合は(⑯欄において離職者の判断に記載がない場合を含む。)、住居地管轄安定所からの照会がなされた場合に応じられるよう⑦欄に記載されている事項を事業主から客観的資料等により確認した内容及び両者で主張が異なる事情について事業主より聴取した内容(離職の理由「4の(2)労働者の個人的な事由による離職」の場合は事業主が離職者から把握している範囲で確認する。)を、離職証明書の安定所記載欄(下欄)に記載しておく。併せて、事業主より資料又は事情聴取による確認を行ったことが住居地管轄安定所において把握できるように安定所記載欄(上欄)の「資・聴 有・無」の該当する箇所を○で囲むこととする。
     なお、事業主が記載する⑦欄について誤りがあることが確認された場合においては、事業主に訂正を行うよう指導する。その上で、⑦欄に記載される離職理由について再度、事業主を通じて離職者の異議の有無の確認を行わせる場合は、⑯欄の「有り・無し」を二重線で抹消し、上部の空欄に再度、異議の有無を記載させることとする。また、⑯欄について、離職票の交付遅延等の理由により、本人が確認した離職理由以外の離職理由について本人に再確認を求めることが困難である場合、⑯欄について事業主に訂正を求め、21454のハのなお書きに準じた取扱いを行う。
  • リ 以上のほか必要があると認められるときは、所得税に関する書類、社会保険関係等の資料を提出させ、又は自ら調査する。さらに必要があるときは、事業所に赴くか、又は監察官に連絡して調査を依頼し、その結果によって判断する。