雇用保険業務取扱要領(行政手引)

20001-23500 適用関係

20352(2) 労働者の特性・状況を考慮して判断する場合

 その他、労働者の特性・状況を考慮して判断する場合の具体例は次のとおり。

  • イ 2以上の事業主の適用事業に雇用される者
    • (イ) 2以上の事業主の適用事業に雇用される者の被保険者資格
      • a 同時に2以上の雇用関係にある労働者については、当該2以上の雇用関係のうち一の雇用関係(原則として、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係とする)についてのみ被保険者となる。
      • b 特に、適用事業に雇用される労働者が、その雇用関係を存続したまま他の事業主に雇用されること(いわゆる在籍出向(21203イ(ロ)fの移籍出向以外の出向))となったことにより、又は事業主との雇用関係を存続したまま労働組合の役職員となったこと(いわゆる在籍専従)により同時に2以上の雇用関係を有することとなった者については、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける一の雇用関係すなわち主たる雇用関係についてのみ、その被保険者資格を認めることとなる。ただし、その者につき、主たる雇用関係がいずれにあるかの判断が困難であると認められる場合、又はこの取扱いによっては雇用保険の取扱い上、引き続き同一の事業主の適用事業に雇用されている場合に比し著しく差異が生ずると認められる場合には、その者の選択するいずれか一の雇用関係について、被保険者資格を認めることとしても差し支えない(なお、(ニ)参照)。
      • c 被保険者が前事業所を無断欠勤したまま他の事業主の下に再就職したため、同時に2以上の事業主の適用事業に雇用されることとなった場合は、いずれの雇用関係について被保険者資格を認めるかを上記に準じて判断し、新たな事業主との雇用関係が主たるものであると認められるときには、後の事業主の下に雇用されるに至った日の前日を前の事業主との雇用関係に係る離職日として取り扱う。
    • (ロ) 在籍出向等の場合における事業主に対する指導
       一の事業主(例えば出向元事業主。以下「A事業主」という。)との間の雇用関係に基づく被保険者資格(以下「A被保険者資格」という。)を有する者が、A事業主との雇用関係を存続したまま他の事業主(例えば出向先事業主。以下「B事業主」という。)に雇用された場合であって、B事業主との間の雇用関係について被保険者資格(以下「B被保険者資格」という。)が認められることとなった場合には、ごくまれにその者について不利な結果を生ずる場合のあることも予想されるので、これらの者の雇用関係の特殊性にかんがみ、次の点について、あらかじめ事業主に対し、十分に指導を行う必要がある。
      • a A事業主及びB事業主の双方から賃金が支払われる者が失業した場合における基本手当の日額又は高年齢求職者給付金若しくは特例一時金の額の決定の基礎となる賃金日額の算定に当たっては、A事業主又はB事業主のいずれか一方が支払った賃金のみが基礎となるので、2以上の事業主の適用事業に雇用される者については、賃金支払関係をいずれか一方の事業主に集約して処理することが望ましいこと(なお、(ニ)参照)。
      • b A被保険者資格を有する者がB事業主との雇用関係に基づきB被保険者資格を取得することによりA被保険者資格を喪失する場合及びB被保険者資格を有する者がA事業主の下に復帰することによりB被保険者資格を喪失する場合におけるそれぞれの被保険者資格の喪失の日については、被保険者期間の計算上不利にならないよう十分配慮する必要があること。
    • (ハ) 在籍出向等の場合における事務処理上の留意点
      • a (ロ)の場合における事務処理に当たっては、次の点に留意しなければならない。
        • (a) A事業主の事業所の所在地を管轄する安定所(以下「A安定所」という。)における取扱い
          • (i) A被保険者資格の喪失に係る資格喪失届の記載に当たっては、5欄(喪失原因)は「1」(離職以外の理由)を記載させる。
          • (ii) A被保険者資格を喪失した後に離職した場合には、A被保険者資格に係る被保険者期間とその後の被保険者期間とを通算することにより受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格を満たすことがあるので、その者が求職者給付の支給を受けようとする場合の取扱いは、21651(離職以外の理由により被保険者資格を喪失した者の取扱い)の定めるところによる。
          • (iii) A事業主の下に復帰した場合におけるA被保険者資格に係る資格取得届の記載に当たっては、2欄(取得区分)には「2」(再取得)を、9欄(被保険者となったことの原因)には「4」(その他)を記載させる(ただし、(ニ)参照)。また、9欄の下の空欄部分に、「復帰」と記載させる。
        • (b) B事業主の事業所の所在地を管轄する安定所(以下「B安定所」という。)における取扱い
          • (i) B被保険者資格の取得に係る資格取得届の記載に当たっては、2欄には「2」を、9欄には「2」(新規雇用(その他))を記載させる。
          • (ii) A事業主の下に復帰した場合におけるB被保険者資格に係る資格喪失届の記載に当たっては、5欄(喪失原因)には「1」を記載させるとともに、11欄(被保険者でなくなったことの原因)には「復帰」と記載させる。
      • b A被保険者資格を有する者がA事業主との雇用関係を存続したままB事業主に雇用された場合であっても、B事業主において被保険者資格を取得しないためにA被保険者資格をそのまま存続する場合には、資格喪失届及び資格取得届の提出は必要はないのでaのごとき取扱いを必要としない。
      • c 昭和43年6月30日において現に取得している同一人に係る2以上の被保険者資格の取扱いについては、当該被保険者資格に限り、同日以後においてもこれを認めることとされているので、諸届の処理について十分に留意する。
    • (ニ) 65歳以上の者に係る在籍出向及び出向元への復帰の場合の取扱い
      • a 65歳以上の被保険者が在籍出向(在籍専従を含む。以下同じ。)により一の事業主(出向元事業主)との雇用関係を存続したまま他の事業主(出向先事業主)に雇用されることになった場合は、引き続き出向元事業主との雇用関係に基づく被保険者であるものとして取り扱うこととする。
         この場合、事業主に対して、当該被保険者に係る賃金支払関係を出向元事業主に集約して処理するよう十分指導する。
         なお、受給要件の緩和につき、50152のヘの(ロ)のcを参照のこと。
      • b また、65歳未満で在籍出向により出向元事業主との雇用関係を存続したまま出向先事業主との雇用関係に基づく被保険者資格を取得した者が65歳に達した日以後に出向元事業主の下に復帰した場合は、出向元事業主との雇用関係に基づく被保険者資格を取得することとなるが、この場合、9欄(被保険者となったことの原因)には「8」(出向元への復帰(65歳以上)等)を記載させる。
      • c 65歳以上(船員の適用上限年齢に係る経過措置に留意。20303のイのなお書き参照)の船員の在籍出向に係る取扱いについて、出向元事業主との雇用契約を残したまま出向先事業主に船員として被保険者資格の適用基準を満たして雇用されることとなった場合には、出向先事業主が指揮命令権を行使し、かつ、給与の支払いを行う場合には、出向先事業所においても、引き続き、被保険者資格を取得できるものとする。この場合、出向元事業主における資格喪失届の5欄(喪失原因)には「1」(離職以外の理由)を、出向先事業所における資格取得届の9欄(被保険者となったことの原因)には「8」(出向元への復帰(65歳以上)等)を記載させる。
         また、この取扱いは、出向先からの再出向、出向元への復帰等に当たっても同様である。
      • d a、b及びc以外の点については前記(イ)~(ハ)による。
  • ロ 引き続き長期にわたり欠勤している者
     労働者が長期欠勤している場合であっても、雇用関係が存続する限り賃金の支払を受けていると否とを問わず被保険者となる。
     なお、この期間は、基本手当の所定給付日数等を決定するための基礎となる算定基礎期間(法第22条第3項)に算入される。
  • ハ 退職金制度のある適用事業に雇用される者
     求職者給付及び就職促進給付の内容を上回るような退職金制度のある適用事業に雇用される者であっても、被保険者となる。
  • ニ 国外で就労する者
    (イ) 適用事業に雇用される労働者が事業主の命により日本国の領域外において就労する場合の被保険者資格は、次のとおりである。
    • a その者が日本国の領域外に出張して就労する場合は、被保険者となる。
    • b その者が日本国の領域外にある適用事業主の支店、出張所等に転勤した場合には、被保険者となる。現地で採用される者は、国籍のいかんにかかわらず被保険者とならない。
    • c その者が日本国の領域外にある他の事業主の事業に出向し、雇用された場合でも、国内の出向元事業主との雇用関係が継続している限り被保険者となる。なお、雇用関係が継続しているかどうかは、その契約内容による。
    • (ロ) (イ)により被保険者とされる者については、特段の事務処理は必要なく、従前の適用事業に雇用されているものとして取り扱う。
    • (ハ) なお、(イ)により被保険者とされる者の受給資格の決定及び賃金日額の算定については、次に留意する。
      • a (イ)のa、bにより被保険者とされる者についての賃金の計算については、50502のル参照のこと。
      • b (イ)のcに係る者については、受給要件の緩和につき、50152のニ、賃金日額の算定につき50611のロ及びハをそれぞれ参照のこと。
         さらに、(イ)のcにより被保険者となる場合については、受給資格の決定及び賃金日額の算定に当たり不利を生ずることのないよう、事業主に対し、賃金の支払関係をできる限り国内の事業主に集約して処理するよう十分助言する。
    • (ニ) 船員については、適用事業(20101のイのなお書き参照)に雇用される船員であれば、当該船員が乗船している船舶が航行する領域に関わりなく被保険者となる。
  • ホ 在日外国人
     日本国に在住する外国人は、外国公務員及び外国の失業補償制度の適用を受けていることが立証された者を除き、国籍(無国籍を含む。)のいかんを問わず被保険者となる。
     外国人が事業主である適用事業に関する取扱いについては、20051参照のこと。
  • ヘ 駐留軍等間接雇用労務者
     駐留軍関係労務者は、ハウスメイド等の家事使用人を除き、すべて防衛施設庁を経由して間接に雇用される形態をとっており、これらの者は、国に雇用される者に該当するが、国家公務員退職手当法の適用は受けないので被保険者となる(20052参照)。
  • ト 外国人技能実習生
     諸外国の青壮年労働者が、我が国の産業職業上の技術・技能・知識を習得し、母国の経済発展と産業育成の担い手となるよう、日本の民間企業等に技能実習生(在留資格「技能実習1号イ」、「技能実習1号ロ」、「技能実習2号イ」及び「技能実習2号ロ」の活動に従事する者)として受け入れられ、技能等の修得をする活動を行う場合には、受入先の事業主と雇用関係にあるので、被保険者となる。
     ただし、入国当初に雇用契約に基づかない講習(座学(見学を含む)により実施され、実習実施期間の工場の生産ライン等商品を生産するための施設における機械操作教育や安全衛生教育は含まれない。)が行われる場合には、当該講習期間中は受入先の事業主と雇用関係にないので、被保険者とならない。
  • チ 船員
     適用事業(20101のイのなお書き参照)に雇用される船員は被保険者となる。
     船員の雇用関係については、船員法において、特定の船舶に乗り組んで労務を提供することを内容とする「雇入契約」と船舶に乗り組むために雇用されているものの船内で使用されていない予備船員としての「雇用契約」とが規定されているが、船員の継続的雇用を前提として雇用契約を締結し、その後に雇入契約を締結して特定の船舶に乗り組むという雇用形態をとる事業所(予備船員制度がある事業所)に雇用される船員にあっては、一航海ごとに交わされる雇入契約(乗船契約)とは関わりなく、雇用契約の下で雇用される間は継続して被保険者となり、また、予備船員制度がない事業所に雇用される船員にあっては、一航海ごとに交わされる雇入契約の下で雇用される間(雇入れから雇止めまでの間)において被保険者となる。
     なお、船員については、船員でない労働者と同様、1週間の所定労働時間が20時間未満である船員については、被保険者として取り扱わない(20703のイ(ヌ)e参照)。
  • リ 土木建築等の事業に雇用される労働者
     土木建築等の事業に雇用される労働者を法第42条の日雇労働者として取り扱うべきか、又は常用労働者として雇用当初から日雇労働被保険者以外の被保険者とすべきかについては、その者の雇用の実態に即して取り扱うべきものであるが、雇用の実態を判断するに当たっては、特に下記の点に留意しなければならない。
    • (イ) 雇用契約の内容が常用労働者としてのものであるかどうか(建設労働者の雇用の改善等に関する法律第7条の規定に基づく雇用に関する文書が交付されている者であるかどうか、労働基準法第107条の規定によって労働者名簿が調製されている者であるか、及び同法第108条の規定に基づく賃金台帳が労働基準法施行規則の様式第20号によって調製されている者であるかどうかについても調査する必要があること。)。
    • (ロ) 工事期間等からみて、雇用契約の内容が実体を伴うものであるかどうか(当該職種ごとに工事工程表等により調査する必要があること。)。
    • (ハ) 労働協約又は就業規則において常用労働者に対して与えられている諸権利(各種手当、休日・休暇、福利厚生等)が、当該労働者に対しても与えられているかどうか。
    • (ニ) 雇用保険以外の社会保険において常用労働者として取り扱われているかどうか。特に健康保険関係においては、政府管掌の場合は資格取得届を提出しているかどうか。組合管掌の場合においては、当該健康保険組合において健康保険法に定める保険給付を受ける組合員として取り扱われているかどうか。
  • ヌ 事業主に雇用されつつ自営業を営む者等  適用事業の事業主に雇用されつつ自営業を営む者又は他の事業主の下で委任関係に基づきその事務を処理する者(雇用関係にない法人の役員等)については、当該適用事業の事業主の下での就業条件が被保険者となるべき要件を満たすものである場合には、被保険者として取り扱う。この場合において、当該雇用によって得る賃金が、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金でないかどうかに留意する(なお、2以上の雇用関係を有する者については、20353参照)。
  • ル 競走事業従事者
    • (イ) 競走事業従事者の定義について
       競走場(競走事業(競馬法に基づく競馬、自転車競技法に基づく自転車競走(競輪)、モーターボート競技法に基づくモーターボート競走(競艇)及び小型自動車競技法に基づく小型自動車競走(オートレース)をいう。)が開催される競馬場、競輪場、モーターボート競走場及び小型自動車競走場)に就労する者であって、常用労働者的諸措置が実施されている者を競走事業従事者とする。
    • (ロ) 競走事業従事者の取扱いについて  競走事業従事者については、雇用保険法第42条の日雇労働者に該当せず、日雇労働被保険者としては取り扱わない。